子供のころの強烈な記憶の中に、かんきりがある。
何度か、母に手を引かれて連れて行かれた。
おぼろげな記憶では、昭和初期のような風景の中、
小さな家の前に人が並んでいて順番を待っている。
ならんでいる子供は皆恐怖で顔がひきつってる。
僕の番がきた。
目の前には魔法使いみたいなおばあさんが、
カミソリをもって座っている。
僕の指をもって、第一関節あたりを、カミソリで、
”ギリッ”と切る。
赤黒い血があふれてくる。
「ほら、悪い血がたまってたんやで」
「これで、カンの虫がおさまった」とおばあさんはいった。
これが効いたのか、効かなかったのか、今もってさっぱりわからない。
覚えてるのは、ひたすら怖かったことと、帰りにオモチャを
買ってもらったことぐらいか。
友人に話しても、そんな怪療法聞いたこともない。という。
あの”かんきり”はいったい何だったのだろう。

